煩雑でデメリットも多く、あまり使われない方法
特定調停とは?
借金を減額して数年で分割返済することで債権者に納得してもらう点は任意整理と同じです。
ただし、任意整理は間に立つのが弁護士や司法書士ですが、特定調停の場合は裁判所です。
裁判所の1室で調停委員・債権者・債務者の3者が丸いテーブルを囲んで、調停委員の示唆を仰ぎながら、和解案を探ります。
特定調停のメリットとデメリット
一見、費用は安いが…
まず、裁判所に直接頼むので、任意整理や自己破産と違って弁護士・司法書士費用が不要です。
裁判所での費用は借り入れ先1社当たり1,000円弱とお安い。
しかし、申し立てから調停成立まで3~4カ月かかり、その間は利子や遅延延滞金もかかります。
法律家が受任通知を出した時点以降は利子がつかない任意整理と対照的です。
つまり、任意整理に比べて弁護士費用は節約できるが、債務は増えます。
プラスマイナス差し引くと、そんなに経済的に有利ではないのです。
債務の減免程度
一方、減額の程度は自己破産(100%)や個人再生(80% つまり20%だけ返済すればよい)のように大きくはなく、任意整理に近いです。
むしろ任意整理より減額は少なくなる可能性が高いです。
任意整理 |
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特定調停 |
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過払い金の差し引きができない
他の3つの債務整理方法(任意整理・個人再生・自己破産)では、最初に過払い金があるか確認し、あれば債務から引きます。
しかし、特定調停では過払い金があったとしても返還の命令はしてくれません。
過払い金返還を求めるなら、弁護士・司法書士を立てて別途やる必要があります。
過払い金は大きい場合には借金が完済できた上にお釣りがくるほどなので、非常に重要なプロセスです。
これは過払い金がある場合、特定調停の重大な欠点ということになります。
取り立て停止に時間がかかることも
また、任意整理では法律家に頼んだら、最短は即日で取り立てが停まりますが、特定調停では時間がかかることがあります。
申立て書を送付すれば取り立ては止まるのですが、自分で書く必要があります。
添付する書類も取り寄せる必要があり、不慣れな人の中には作成に時間がかかる人がいます。
もたもたしていると、その間も取り立ての電話は鳴りやまないわけです。
調停成立後に滞納した時もシビア
また、債務整理措置が発効した後に返済が滞った場合の扱いも大きな違いがあります。
任意整理の場合は給与などの差し押さえがすぐには行われないのに対し、特定調停では簡単に差し押さえることができます。
「似たようなものだ」と考えて特定調停を選ぶと、ちょっと返済が遅れただけで大変なことになる危険があるわけです。
しかも、手続きは特定調停の方が任意整理よりずっと煩雑です。
こうしてみると、特定調停は任意整理に比べてメリットがないので、使われることが稀です。
利用者はどんどん減っています。
利息さえなければ数年で返済できそうな借金なら、任意整理を依頼する方が正解だと思います。